2020年12月15日、世界最大級のアダルトサイトである「Pornhub(ポルノハブ)」から大量のアダルト動画が削除される事態が発生しました。
削除されたアダルト動画は実に600万本を超えているとのことですが、いったい何があったのでしょうか。
Pornhubからのアナウンス
Pornhub(ポルノハブ)サイトではブログ形式での最新ニュースが公開されており、2020年12月15日に投稿されたブログエントリは以下のような趣旨の内容となっていました。
信頼と安全への取り組み
- コミュニティの安全を最優先事項として、先週これまでにも最大のセーフガードを制定した。
- 未確認のアップローダーによる新しいコンテンツの投稿を禁止
- コンテンツパートナーやモデルプログラムメンバーが作成したもの以外のコンテンツも一時停止
- 未確認ユーザーによるダウンロードを禁止
- 数十の非営利団体との提携
- その他主要なポリシーを変更
つまり、今後Pornhubで取り扱うコンテンツはコンテンツパートナーやモデルプログラムメンバーが作成したオリジナルのコンテンツおよびユーザーとのコミュニティにほぼ完全に限定して運営することを宣言したものとなっているようです。
アナウンス後のPornhubの状況
このアナウンスと並行し、サイト内では大量の動画の削除(非公開)作業が大規模に行わたほか、ダウンロード機能の停止などの措置がとられました。
これまで違法やグレーな形でアップロードされていた動画などはすべて公開停止された形となっています。
日本のコンテンツの多くは現在まで実際のところ他の有料アダルトサイトのコピーや何らかの形で個人撮影の動画が流出、複製されたものなどがアップロードされているものが多数あったため、これらの動画についてはすべて「コンテンツパートナーやモデルプログラムメンバーが作成したもの以外のコンテンツ」として一時停止されている状況となっているようです。
一時停止、とありますが多くのアダルト動画は前述の通り権利やプライバシーなどの観点から適切なポリシーに則っていないものがほとんどと思われるため、このまま削除されることが予想されます。
Pornhubのアカウント構成
Pornhubのアカウント(パートナー契約)にはいくつかの種別があり、その中にはモデル本人との合意を基に契約締結が行われるモデルプログラムや、包括的なコンテンツ提供を行うパートナープログラムなどがあります。
これらのプログラムに基づく契約者はPornohubとの合意のもとアダルト動画などのコンテンツのアップロードを行っている方たちで、一般のSNSなどで例えるといわゆる「本人確認済み」のアカウントや、企業の「公式アカウント」に該当するようなアカウントです。
これまでPornhubでは、野良アカウントのように匿名や偽名などで自由に取得した無料アカウントユーザーを通じてアップロードされた動画コンテンツなども多く公開されていました。これらは従来も一定のポリシーを基に公開の制限などがされてきていましたが、今回の騒動を受けて、これらの未確認ユーザーによりアップロードされた動画が削除された形となります。
今回の対応以降、本人確認が行われていない無料アカウントやプレミアムアカウントを通じて写真やビデオの投稿を行おうとすると、「User uploads are currently only available to members of our Model Program and Content Partner Program until our new verification system is launched.(ユーザーからのアップロードは新検証システムの開始まで、モデルプログラムとコンテンツパートナープログラムのメンバーのみが利用できます。)」という旨のメッセージが表示され、操作が中断される状況となっています。
Pornhubの大規模な動画削除対応に至った背景
海外サイトのviceによると、今回の対応はニューヨークタイムズに掲載された記事が発端となっているとのこと。ニューヨークタイムズの記事は未成年を含む動画やリベンジポルノなどプライバシーや倫理面などを含め、これらのアダルトサイトが適切なポリシーで運用されていないという問題提起をしたものとなっていました。
この内容を受け、Pornhubではポリシーの変更やコンテンツの新規アップロードの停止などの取り組みについて対応を進めていましたが、決定的になったのはその後のマスターカードとビザからの発表でした。
Pornhubの対応の発表が行われたのち、マスターカードとビザがPornhubとの取引停止を発表。現在有料コンテンツの決済機能のために提携していた2社から支払いの処理が完全に停止された状況となっています。
このマスターカードとビザからの発表はPornhubのみを対象としたものでなく、同様の状況とされているRedtube、Youporn、XTube、Brazzersなどの複数のアダルトサイトに対しての取引を停止するとされており、これらの対応が決定打となり他のアダルトサイトでも同様のアダルト動画の削除、ポリシーの変更が進行している状況となっているようです。
それってアダルトサイトだけの問題!?
ここまで見てみると、世界のアダルトサイトでは違法なポルノ動画が蔓延し、しかもこれらのサービスの管理者は未確認で見てみぬふりをしている状況。しかもそれらの企業や違法アップロードを行った人間に不当な利益が回っていることが問題だ、という側面も読み取れます。
そもそも、アダルト向けではないSNSにも動画や画像などのコンテンツアップロード機能があり、そこにはアダルト、ノンアダルトにかかわらず著作権を侵害する多くの違法動画、また場合によっては今回のPornhubに指摘されたようなプライバシー侵害や性的虐待にかかわるコンテンツが公開されていることが問題視されることがあります。
Pornhubのブログでもこれらの件について、今回のような未確認のアップローダーを禁止するポリシーはFacebook、Instagram、TikTok、YouTube、Snapchat、Twitterなどのプラットフォームがまだ制定していない要件であること。また、過去3年間で自社プラットフォームのコンテンツ調査では性的虐待コンテンツは118件であった一方、Facebookでは児童の性的虐待に関する8,400万件の事例が自己申告されていると述べています。
Pornhubがアダルトサイトだからやり玉に挙げられた、大手SNSでも違法行為は続いているのに!と捉えられるような言い分ではありますが、この主張は新たな問題提起になるのでしょうか。
個人的にはPornhubの主張にはすべてではないものの、アダルトサイトだからやり玉に挙げられたという印象については共感しています。当面アダルトサイトへの圧力が続くことが予想されますが、一般向けを謳ったサービスが違法コンテンツの温床となっているような事実があるのであれば、今後それらも同じように正されるべきです。
Pornhubのブログでは以下のような一文で締めくくられていました。(意訳)
「世界では、(一般向けであってもアダルト向けであっても)すべてのソーシャルメディアプラットフォームが違法な素材と戦う責任を共有している。それらの解決策は正しい事実と正しい専門家によって(等しく平等に)推進される必要がある。我々が今回の事例で手本を示し導いていくことを実証したことを願っている。」
(追記)xvideosでも動画の削除が進行
今回のPornohubによる未承認ユーザーからの投稿動画の一斉削除(非公開)対応に続き、アダルト動画サイトであるxvideosでも同様の動画削除の対応が進んでいるようです。
背景には今回の対応の発端のひとつとなったジャーナリストの発言に続き、同氏からユーザーが多く監視等の規制が少ないxvideosにも圧力をかけるべきだとの投稿がSNSにあったためとみられています。