上映中の『レゴバットマン ザ・ムービー』を映画館で見てきました!子供向け映画と高をくくっていたらいい意味で壮大に裏切られました。
今回は、大人が観るべき「レゴバットマン ザ・ムービー」をレビューします。
映画「レゴバットマン ザ ムービー」レビュー
改めて語るほどではありませんが、バットマンは1939年にアメリカンコミックで誕生した古典的作品。その後から現在まで、バットマンはアメリカでは国民的ヒーローとしてコミックだけでなく、アニメや映画など数々の映像作品にリメイクされています。
バットマンは登場する悪役も個性的。それぞれのキャラクターは時に主役であるバットマンよりも強烈な印象を残し、中でも宿敵のジョーカーはバットマンシリーズの不動の敵役として数々の映像作品で戦いを繰り広げてきました。
数年前にクリストファー・ノーラン監督によりリメイクされた3部作「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」「ダークナイト ライジング」をご覧になった方も多いのではないでしょうか。バットマンは作品によって様々なテーマで表現されていますが、一貫しているのはバットマンが完全な正義ではない「ダークヒーロー」であること。
過去作品には完全な子供向けに作られたコミカルで単純明快な作品もありますが、時間を経て様々な解釈で作られた数々の作品は、子供向けだけで終わらず大人も楽しめる魅力があります。
バットマンの共通の舞台となるゴッサムシティには数々の悪役が登場します。バットマンはその悪役たちを退治してゴッサムシティのヒーローになるのですが、そのヒーロー性は皮肉にも悪役が暴れまわることで保たれるもの。
バットマンがいる限りゴッサムシティは平和ではない。
バットマンがいるからゴッサムシティは平和にならない?
悪役達とバットマンは表裏一体。
「ダークナイト」ではこの矛盾を悪役であるジョーカーから突きつけられ、葛藤するバットマンが描かれています。
このように過去のバットマン作品では比較的暗くて重いテーマも描かれてきました。
レゴじゃなければできないこと
でもこのレゴバットマンは一味違います。
レゴバットマンではこの重いテーマがレゴの世界観で軽快にアレンジされています。
高級そうなローブを羽織り、大豪邸でひとりロブスター(のレゴブロック)を食べ、映画館のような部屋のど真ん中で独り言を言いながら映画を観るバットマン(ブルース・ウェイン)の姿は、大富豪の孤独を可笑しさを交えて絶妙に表現されています。
そしてレゴの世界を舞台に、子どものおもちゃ遊びのようにジョーカーたちと戯れるレゴバットマン。戦うことで保たれるバットマンとジョーカーの関係性はまるでアンパンマンとバイキンマンのよう。
いつものようにハチャメチャな戦いを繰り広げるバットマンとジョーカー。その二人の関係のバランスを崩すある「ひと言」をきっかけに、世界を巻き込む大事件が起こります。
バットマン歴代の悪役たちが押し寄せて繰り広げるバトルは大迫力。
さらにネタバレは避けますが、シリーズの悪役だけでなく、意外性に溢れたたくさんのゲストキャラが登場しストーリーをさらに盛り上げます。
このゲストキャラ達はある作品の登場キャラクターでもあるのですが、あまりにも数が多すぎて一回見ただけでは何がなんだか追いきれないほど。
しかも個性豊かで印象的なキャラクターが多いため、映画も繰り返し見たくなってしまいます。
まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなハチャメチャさ。現代の街やファンタジー、SFの世界などあらゆる世界を作ることができるレゴだからこそ、この作品が表現できたのではないかと思います。
フルCGで作り上げられた映像は過去に公開された映画「LEGOムービー」のように、プラスチックの質感を活かしたもの。レゴ風にパロディされたアニメ映像のように、登場するキャラクターの膝がグチャグニャ柔らかく曲がったりはしません。キャラクターたちはあくまでプラスチック製のレゴブロックとして、足の裏にはLEGOの刻印があり、ブロックの表面には細かい擦り傷がついています。
本物のレゴブロックとして再現されたキャラクター達の動きがストップモーションの実写映像のような手法で表現されているのも、レゴブロックの楽しさを映像で体験するための正しいリアリティだと感じました。
ストーリーも映像も「レゴじゃないとできないこと」を第一にこの作品が作りあげられていることが良くわかります。
つい大人達がわいわいレビューしたくなるパロディ要素
さらに至るところに仕込まれた映像作品のパロディも必見です。
レゴバットマンではバットマンシリーズの過去作品での出来事が、まるでレゴバットマン自身の経験のように語られます。このあたりの旧作品をもじったパロディも絶妙で、バットマンとレゴバットマンがリンクする演出は過去作品をご覧になった方なら思わずニヤリとしてしまうはず。一方で過去作品を知らなくても楽しめるよう、わざと印象的に旧作のネタをとりあげてくるあたり演出が秀逸です。
あのキャラクターってなんだっけ?
もしかしてあのアイテムもパロディなの?
と、ついつい映画を観たあとに元ネタを調べたくなっちゃいます。
そしてこんな感じでつい映画の感想をレビュー記事にして伝えたくなってしまうのもこの映画の魅力だと感じます。
子供向けと思いきや、レゴとバットマンをダシにした大人たちの悪ノリが過ぎるパロディは、この作品の最大級のエンターテイメントと言えるかもしれません。
小島よしおさんの吹き替えも良かった
『レゴバットマン ザ・ムービー』は字幕版と日本語吹き替え版のふたつがありますが、私が見たのは日本語吹き替え版。
吹き替えもテンポが良く違和感はありませんでした。特に小島よしおさんが演じるロビンはいろいろと前情報で不安があったものの、実際聞いてみての感想は全く本人と気づかない程のクオリティ。
好みもあると思いますが、キャラクターにも良くマッチしていて、小島よしおさん以外では考えられないほど印象深くロビンを演じています。
ちなみにレゴバットマンはストーリー展開が早く、セリフの数もかなり多いので、個人的には日本語吹き替え版がおすすめです。
それでも聞き流しちゃうセリフも多いので、二度三度と見返したくなってしまいます。
見終わったときの感想は、とても清々しい
そしてこのレゴバットマンでは、バットマンの他作品では言えなかったことが、バットマンとジョーカー、ロビンをはじめとする登場人物とのやり取りによってとてもストレートに表現されています。
幼い頃に両親を失った孤独。
ヒーローとしての葛藤。
親子の絆。仲間の信頼。
バットマンという同じ世界観の中で作られたひとつのパラレルワールドとして、レゴバットマンは他のバットマン作品にはないとても暖かい結末を迎えます。
レゴの世界に共通する誰もが楽しめるストーリー、ブロックを使ってシリアスなテーマもパロディも、数あるバットマンの世界観、テーマもすべてレゴの包容力で受け入れてしまう。
それがバットマンをレゴで表現する意味であり、レゴがもつ最強の力であることを改めて感じることができました。
親と子供、友達や恋人、映画好きやバットマン好き、そうじゃない人、どんな視点でも誰もがどこかにのめり込み、感情移入してしまう魅力がこのレゴバットマンにはありました。
見終わって清々しい気分になれる作品です。