YouTube MusicとYouTube Music Premiumのサービス比較です。
特典の違いや使用上の注意点などについてまとめています。分かりにくく迷いやすい部分を実際に利用して検証していますのでサービス導入の際の参考にどうぞ。
こんな方はぜひお読みになってみてください。(特に最後の項目、私もずっと勘違いしていました)
- YouTube MusicとYouTube Music Premiumの違いが判らない
- YouTube Music Premiumであの曲が配信されているか知りたいけど見つからない
- YouTube MusicってYouTubeの音声だけを抜き出して再生するアプリだと思ってた←違います!
YouTube Music Premiumとは
YouTube Music Premium(ユーチューブミュージックプレミアム)は、音楽配信サービスである「YouTube Music」の有料サブスクリプションサービスです。
YouTube Music Premiumに加入することで、以下の4つの特典が適用されます。
YouTubeヘルプより
・YouTube Music の何百万本もの楽曲や動画を広告なしで視聴できます。
・楽曲や動画をモバイル デバイスに一時保存して、オフラインで再生できます。
・他のアプリを使用中に、バックグラウンド再生で音楽を楽しめます。
・Google Home または Chromecast Audio で音楽を再生できます。
と、YouTubeヘルプでは説明されているのですが、これだけではわからない重要なポイントがいくつかあります。
YouTube Musicについて
有料サブスクリプションサービスの確認にあたり、そもそもYouTube Musicの基本的なサービスや機能的な制限がどのようになっているのかを確認していきます。
YouTube Musicの基本的なサービス
YouTube Musicの基本的なサービス仕様や制限は以下の通りです。
- ユーザーや企業が投稿、配信する楽曲を無料で聴くことができるが、その多くはYouTubeで配信されているミュージックビデオなどの音源を利用したものとなっている。
- YouTube Premiumで配信されている楽曲を聞くことができない。
- シングルやアルバム単体の楽曲などの有料コンテンツの購入はできない。(買い切りのサービスは提供されていない)
- 自分で購入したMP3などの音楽データ、CDデータなどのファイルをアップロードして聞くことができる。
- 無料の音楽を視聴する際、再生前に音声広告や動画広告などの広告が再生される。
- スマホやタブレットのYouTube Musicアプリを使用している場合、アプリを切り替えたり画面をロックをすると動画の再生が停止する。
- 音声や動画を再生するためには常にネットワークに接続し通信できる状態になっている必要がある。事前のダウンロードなどはできない。
YouTube Musicサービスの特徴として「無料で聴ける代わりに広告が流れる」という印象があるかと思いますが、それよりも重要でかつ判りにくいポイントとして、そもそも「YouTube Premiumの配信楽曲を聞くことができない」ということが挙げられます。
この楽曲の扱いについては後述しますが、私もずっと勘違いをしていたのがこの仕様です。
YouTube MusicってYouTube動画の音声部分を再生できるサービス?
私はずっと「YouTube MusicはYouTubeの動画の音声を再生できるサービス」だと思っていました。
そう思ってしまっていた理由は単純で、YouTube Music(無料版)にアクセスして音楽を聴こうとすると、その多くはYouTubeのミュージックビデオなどの動画から抜き出された音声が音楽として再生されます。
例えば、特定のアーティストを選択して再生すると、そのアーティストのミュージックビデオが再生されるだけで、結局はYouTubeに上げられた動画の音声だけを聞いている状態。
ミュージックビデオはプロモーション目的で作られており、ものによっては原曲とは異なる編集がされているものやワンコーラスのショートバージョンで公開されているものも多いため、YouTube Musicに曲があったからと言って結局はフルコーラスを聴くことができない場合もあります。
この仕様がYouTube Musicのサービス自体をあいまいにさせてしてしまっているのではないかと思いますが、そもそもYouTube Music PremiumはYouTubeとはほぼ別物といっていい音楽配信サービスで、SpotifyやApple Musicなどと同じ、音楽レーベルなどが配信する楽曲を無制限に聞くことができるサービスです。
ただ、その楽曲のほとんどは無料版もしくは未ログインの状態では聴くことができません。Spotifyなどでは無料アカウントの場合であっても、再生方法や広告配信などの制限がありながらも新譜などの配信楽曲が聴けるようになっていますが、YouTube Musicでは楽曲自体を聞くことができません。
そのため、YouTube Musicの無料版を使っているだけでは、YouTube Music Premiumの実際の機能や配信楽曲のバリエーションなど、サービスの価値がわかりにくい状況になっています。
YouTube Music Premiumで聴くことができる楽曲
では、YouTube Music Premiumで聴くことができる楽曲はどうやって確認できるのでしょうか。
これもちょっと気づきにくいのですが、画面を追って説明します。
(画面は2020年12月現在のものです)
YouTube Music Premiumで聴くことができる楽曲を検索するには
まず、YouTube Musicのページを開きます。
右上の「検索」をクリックし、聴きたいアーティスト名を検索します。ここでは2020年12月9日に新譜が発売された『櫻坂46』を検索してみます。
検索結果には櫻坂46の楽曲が表示されてますが、見出しが「動画」となっています。これらをクリックしてもYouTubeの動画が再生されるだけです。さらに、「楽曲」のセクションにも櫻坂46の楽曲は表示されません。
一番下までスクロールし、アーティストの項目にある「櫻坂46」をクリックします。
「すべて表示」をクリックします。
楽曲の一覧が表示されました。これらの楽曲は2020年12月9日に発売された櫻坂46の楽曲ですが、行頭には「!」が表示され文字もグレーアウトしておりクリック(再生)することができません。
この「!」がついた楽曲がYouTube Music Premiumに加入することで聴くことができる楽曲になっています。
同様に検索してみると、多くのアーティストの楽曲がYouTube Music Premiumサービスでのみ配信されていることがわかります。
ただ、そのほかにもいろいろ勘違いしやすい部分がYouTube Musicにはあります。
YouTube Musicでわかりにくいポイント
YouTube Musicを使っていて気づきにくい、間違えやすいポイントを整理してみました。
楽曲を検索してもミュージックビデオなどの動画が優先表示される
YouTube Musicの検索結果はなぜか「動画」のセクションが上位に表示されます。おかげでYouTube Musicが動画再生サービスと勘違いしてしまいそうですが、音楽はこのセクションよりも下に表示されます。
さらに問題なのは、YouTube Music Premium配信対象の楽曲が「曲」の検索結果セクションには表示されないため、Premiumに加入することで聴けるようになる楽曲を直接検索したり、この画面で判別したりすることができません。
さらに下の「アルバム」セクションに該当する楽曲が含まれたアルバムがあった場合、構成楽曲を見ることはできるのですが、こちらにも問題があります。(後述)
アルバムにアクセスしても再生されるのはYouTube動画
検索画面やアーティストのページから「アルバム」にアクセスすることができ、アルバムの収録曲を確認することができるのですが、こちらもちょっとわかりにくい仕様になっています。
まず、無料版もしくは未ログインで使用している場合、再生可能な楽曲のみが白字で表示され、再生できない楽曲は「!」が行頭に表示されます。
ただし、この状態で再生できる楽曲は、主にYouTubeに公開されているミュージックビデオなどの動画となっています。
上記の例では、1、2、6の楽曲名をクリックすると音楽ではなくミュージックビデオが再生されます。その他の楽曲名はクリックができません。
一方、YouTube Music Premium加入アカウントでログインした状態で同じアルバムを見ると、全曲が再生できるようになっています。
このときに項目をクリックして再生されるのはミュージックビデオではなく「YouTube Music Premium」の配信楽曲です。逆に、YouTube Music Premium加入アカウントでログインした状態ではこのリストやプレイヤーからミュージックビデオ(動画)を再生させることができません。(※モバイルアプリ版では再生画面で動画と音声の切り替え機能が付いています)
つまり、同じ項目にもかかわらず、Premiumの加入状況によってクリック/タップした時の挙動が異なります。さらに、この画面にたどり着いても「!」の項目や再生メディアに関する説明などもないため、なぜ再生できないのかなどの違いも一見して区別がつきません。
YouTube Musicがただの動画音声抜き出し再生サービスと勘違いしてしまう理由がこのあたりにあるのではないかと個人的には思っています。
無料版ではアーティストページの「アルバム」が表示されない
さらに、無料版もしくは未ログインで使用している場合、アーティストページにアクセスしたところでそもそも楽曲やアルバムが表示されません。
下記は未ログインでアーティストページにアクセスした状態。先頭には「動画」セクションにYouTubeで配信されているミュージックビデオがリストアップされており、それ以下には関連する(けどアーティスト本人ではない)プレイリストなどが表示されています。
同じアーティストをYouTube Music Premium加入ユーザーでアクセスしてみた状態だと以下のようになります。楽曲やアルバムが先頭に表示されます。
これらの挙動の違いは無料版で利用しているユーザーから余計なコンテンツを隠して利便性を高めるために採用したものなのではないかと予測されますが、これでは無料版もしくは未ログインで使用している場合、楽曲が配信されていることに気づくことができないため、そもそもYouTube Music Premiumサービスの検討の動機に繋がらないような気がするのですが、どうなのでしょう。
YouTube MusicとYouTube Music Premiumの比較
上記により、そもそも配信楽曲や再生の仕様がYouTube MusicとYouTube Music Premiumでは大きく異なっています。
YouTube MusicとYouTube Music Premiumのサービス比較にあたり、まずはこの配信楽曲の違いを踏まえてその他の機能比較を整理すると以下のようになります。
YouTube Music、YouTube Music Premiumサービス比較表
YouTube Music、YouTube Music PremiumおよびYouTube、YouTube Premiumのサービス比較です。
YouTube Music | YouTube Music Premium | YouTube | YouTube Premium | |
---|---|---|---|---|
視聴可能な 動画、音楽 | YouTubeの何百万本もの動画からの ミュージックビデオの楽曲 [A] | ミュージックビデオの楽曲 と YouTubeとは別の数百万の楽曲 [B] | 何百万本もの動画 [C] | 何百万本もの動画 と YouTube Music Premiumで聴くことができる楽曲 と その他※3 [D] |
ダウンロード再生※1 | × | ○ 音楽およびミュージックビデオのみ | × | ○ |
バックグラウンド再生※2 | × | ○ 音楽およびミュージックビデオのみ | × | ○ |
広告表示・再生 | 広告あり | 広告なし ミュージックビデオのみ | 広告あり | 広告なし すべての動画 |
※1. モバイル機器などでネットワークに繋がっていない状態での再生(オフライン再生)
※2. モバイルアプリなどでロック中、アプリ切り替え中の再生
※3. YouTube Originals等のPremium限定動画など
ここではYouTube Musicサービスの解説のため、YouTubeおよびYouTube Premiumの詳細の説明は省略しますが、視聴可能な動画音楽などについてはYouTubeも併せて比較するとよりわかりやすいと思います。
まず、そもそもYouTube Musicで聴ける楽曲とYouTube Music Premiumで聴ける楽曲は全く異なり、YouTube Musicはミュージックビデオの動画が視聴できる一方、YouTube Music Premiumでは各音楽レーベルなどが配信する楽曲を無制限で聴くことができます。([A]には音声のみの楽曲がほぼ含まれておらず、YouTubeのミュージックビデオで構成されている)
これらの基本的な仕様は音楽サブスクリプションサービスであるSpotifyやApple Music、AWA、LINE Musicなどとほぼ同一と考えて問題ないと思います。
配信楽曲や提携レーベルなどについてはサービスにより異なりますので、前述のアーティスト検索などを参考にお気に入りのアーティスト、楽曲が配信されているかどうかを確認しておくとよいでしょう。
また、モバイルアプリでのダウンロード再生、バックグラウンド再生や広告の停止はYouTube Music Premiumの配信楽曲のほか、YouTubeで配信されているミュージックビデオでも有効になります。(YouTube Musicアプリ利用で)
外出中はスマホで音楽、自宅ではPCやタブレットなどでミュージックビデオを中心に楽曲鑑賞などを行う場合などであれば、YouTubeのミュージックビデオも広告なしで楽しめるため、地味に嬉しい機能です。
なお、YouTube Premiumは、配信動画のダウンロード再生、バックグラウンド再生や広告の停止が行えるほか、YouTube Music Premiumの楽曲もすべて聴けるようになるサービスとなっています。([D] = [B] + [C])
YouTube Music Premiumは必要?不要?
中盤の解説の通り、YouTube Misicは無料版もしくは未ログインで使用していると、YouTubeの音声再生アプリ程度の使い道しかありません。(動画も再生されるので特に違いが分かりにくい)
一方、YouTube Music Premiumは音楽サブスクリプションサービスとして数百万の楽曲が配信されており、配信楽曲もSpotifyやApple Musicに引けを取りません。
また、「音楽をアップロードする」機能を使って、過去に購入した音楽(MP3)やCDなどの楽曲をアップロードしてそれらの音楽も一緒にYouTube Musicで楽しむことができます。
YouTubeの関連サービスであるYouTube Musicは利用アカウントもYouTubeなどと同じGoogleアカウントが使用でき、再生履歴や楽曲の評価などからラジオ(ステーション)やオススメの曲などが最適化されていくので、個人的にはこれらの連携に特に便利さを感じています。
また、YouTube Music PremiumはGoogle Nest デバイスなどのスマートスピーカーにも対応しているため、自宅でこれらのGoogle製品を使用している場合は非常に相性良く使うことができます。
一方、Apple製品などでは未対応や対応が不十分の場合もあるので、普段利用しているデバイスなどによって多少利便性が左右されると思います。また、配信されている楽曲は他のサブスクリプションサービスと大きく重複するものも多いと思うので音楽配信サービスはいずれか一つを選ぶ形になると思います。
以上から、主にAndroidやGoogle製品・デバイスを利用している方で、これから音楽サブスクリプションサービスを新たに検討されているのであれば、YouTube Music Premiumは十分オススメできるサービスです。
私の決め手はスマートスピーカーとの連携でした。現在Google Nest HubやGoogle Homeを家に複数配置しているので、家のどこにいても声で音楽再生できるほか、スマートフォン(Google Pixel)からの操作も利便性が高く使い勝手が良いです。
まとめ
- YouTube Music PremiumはApple MusicやSpotifyと同じ音楽サブスクリプションサービス
- YouTube MusicとYouTube Music Premiumでは配信楽曲や再生の仕様が大きく異なり、サブスクリプションのサービス内容がわかりにくい
- YouTube Misicは無料版もしくは未ログインで使用していると、YouTubeの音声再生アプリ程度の使い道しかありません
今回、そもそも私の理解が足りなかったところも多かったのですが、同じようにYouTube Musicの配信楽曲や仕様を勘違いされていた方もいらっしゃるのではないかと思い、YouTube Musicの仕様についてまとめてみました。
YouTube Music Premium自体は非常に良いサービスですので、Google製品を中心に使用されている方で音楽サブスクリプションサービスを検討されている方はぜひ試してみてください。
ここから先はYouTube Musicサービスに関する個人的な余談です。お時間があれば読んでみてください。
余談:Google Play Musicから移行してきたユーザーの視点
下記の記事に関連する余談です。
※注:余談の癖に長文です(笑
Googleが提供する音楽配信サービスの「YouTube Music」
このYouTube Musicサービスですが、もともとGoogleは「Google Play Music」と呼ばれる音楽配信サービスを提供していました。
この「Google Play Music」は、2020年の8月から段階的にサービスを終了し、現段階ではほとんどのユーザーがアクセスできない状態となっているほか、サービス終了に際して、多くのユーザーがYouTube MusicをGoogle Play Musicの後継サービスとして移行してきた経緯があります。
しかしながら、YouTube MusicとGoogle Play Musicが提供してきたサービスや機能的な特徴に大きな違いがありました。それが「買い切りでの音楽販売」と「所有音楽データのアップロード機能」です。
Google Play Musicからの移行が勘違いを生んだかも?
Google Play Musicでは、楽曲を個別に課金して購入できる「買い切りでの音楽販売」があり、Google Play Storeから音楽アルバムの聴きたい曲を1曲単位で購入することができましたが、YouTube Musicではそれができません。
また、YouTube Musicにも「音楽データのアップロード機能」はあるのですが、Google Play Musicと比べて機能や性能が乏しく、現状データの管理がしづらかったり、再生ボタンを押してから音楽が再生されるまでに時間がかかったりと、パフォーマンスが十分ではありません。
私もそのGoogle Play Musicからの移行ユーザーのひとりなのですが、実際のところ、上記2点の「買い切り」と「アップロード」に関しては、これまでのGoogle Play Musicと比較して正直利便性は大きく低下した、と感じているのが現状です。(そもそも買い切りはできなくなってますし)
ただ、このYouTube Musicが行った対応にもやむを得ない理由がありそうです。
音楽サブスクリプションサービスの著しい拡大
YouTube Music無料版のいまいちな利便性やサービスの制限は、音楽サブスクリプションの急激な拡大に対するサービス戦略が背景にあると思われます。
世界の音楽業界団体IFPI(国際レコード産業連盟)より発表されている2019年のGlobal Music Report(参考)によると、2010年から2019年まででCD販売の市場規模は183億ドルから44億ドルと半減しました。
また、買い切りのダウンロード販売についても39億ドルから15億ドルと半減以下になっている一方、サブスクリプションサービスは4億ドルから114億ドルと、30倍近く市場規模が拡大しています。
日本の音楽業界では握手券や特典商法などが有効なマーケティング手法として「円盤売り」が行われており、買い切りのサービスが根強く行われているのも事実ですが、世界的にはダウンロードや物理的なCDの購入は確実に減少を続けており、グローバルのサービスはサブスクリプションにシフトしています。
YouTube Musicが「買い切り」や「アップロード」に力をいれていない(入れられない)理由はここにもあるのではないかと思います。
YouTube Musicの真価は?
Google Play StoreのYouTube Musicアプリのレビューなどを見ても、前述の「買い切り」と「アップロード」の2点にフォーカスされた低評価コメントが多く見られます。
このあたりの評価は私自身も非常に共感できるのですが、一方で今回この解説コンテンツを作ろうと思ったきっかけは、YouTube Musicの真価がPremiumのサブスクリプションサービスにあると考えたからでした。
裏を返すと、厳しい言い方ですがYouTube無料版ではほぼ価値を感じられないサービスともいえるかもしれません。そして残念ながら「買い切り」や「アップロード」を中心に利用していたユーザーにとっては特にこの印象が強くなるサービスといえそうです。